【特集】『くたばれ愛しの魔術師ども』刊行記念特別企画 佐藤真登先生×ニリツ先生スペシャル対談インタビュー

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2026年2月15日にGA文庫より『くたばれ愛しの魔術師ども』が発売された佐藤真登先生ニリツ先生の対談をお届けします。アニメ化も行われた『処刑少女の生きる道(バージンロード)』のタッグが、再び手を取り合った最新作が始動します。互いのクリエイティブに対する信頼性、王道魔法学園ファンタジーへと至った着想、そしてお二人の好きが混ざりあって生まれた個性的なキャラクターたちについてなど、様々にお話をお聞きしました。

 

 

くたばれ愛しの魔術師ども

 

 

【あらすじ】

千を超える魔術学園が乱立する浮遊都市。2つの世界の学生たちが異端の青春を謳歌する『学園諸島』。学園諸島のルールは一つ。それは、あらゆる手段を用いて、自らの学園を最強の座へ押し上げること――!「俺は学園諸島で人並み外れた青春を過ごしてやるんだよ!」地球を追われた異能の少年・九郎は、学園諸島の王立トリトニス学園に入学する。しかし、かつての名門トリトニス校はいまや廃校の危機。残された生徒はわずかに魔女3人、しかも一癖ある少女ばかりで――!?ファンタジーの地平を切り拓く、禁断にして王道の異世界×現代ファンタジー!「処刑少女」コンビが放つ“人並み外れた”物語、開幕!!

 

 

・佐藤真登

『ヒロインな妹、悪役令嬢な私』にて2016年に作家デビュー。第11回GA文庫大賞において、『処刑少女の生きる道(バージンロード)』が『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』以来となる7年ぶりの《大賞》を受賞。同作は2022年にアニメも放送され、全11巻で刊行された。(過去のインタビュー記事はこちら

 

・ニリツ

『処刑少女の生きる道(バージンロード)』のほか、『賭博師は祈らない』や『とある暗部の少女共棲』など数多くのライトノベルのイラストを担当。アニメのキャラクター原案やVTuberグループ「スナックにり」の運営など、活動は多岐にわたる。

 

 

――本日は佐藤真登先生とニリツ先生にお話をおうかがいします。よろしくお願いします。

 

佐藤ニリツ:よろしくお願いします。

 

 

――まず、ニリツ先生はラノベニュースオンライン初登場となります。自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか。(佐藤真登先生のインタビュー記事はこちら

 

ニリツ:初めまして。イラストレーターのニリツと申します。GA文庫さんでは真登さんとご一緒した『処刑少女の生きる道(バージンロード)』のほか、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のファミリアクロニクルや掌編集などを担当させていただいています。普段はライトノベルのイラストを中心に、VTuberやゲームのお仕事などもやらせていただいております。

 

 

――ありがとうございます。一方で佐藤先生は前回のインタビューから約6年半の月日が経ちました。振り返ってみて何か変化を感じる部分などはありますか。

 

佐藤:そうですね。前回のインタビューを受けた時と比べると、だいぶ若さが失われたなと(笑)。あとは、今年で作家デビュー10年目を迎えたんですよ。

ニリツ:おめでとうございます。

佐藤:ありがとうございます。作家業を10年続けてみて、書き続けていれば生き残れるものだなと思いました。もちろん、あちこちからチャンスをいただけた幸運はありますが、「小説投稿サイトから」、「小説賞から」、そして今回の「企画から」と、あらゆる出版ルートを辿ってこられたなと感じています。

 

 

――前回のインタビュー時には健康のために水泳を始めたとおっしゃっていましたが、まだ続けていらっしゃいますか。

 

佐藤:水泳は続いていないんですけど、1日1万歩以上は歩くように心掛けていますね。

ニリツ:すごい。運動はご無沙汰で……せめてウォーキングくらいはしたいと思っています(笑)。

佐藤:僕は朝にたくさん歩くようにしていますね。自分の中でコースを決めて、歩ける日は歩くという形で健康に気を使っています。ヘルスケアアプリを見ると、今日も既に17,000歩は歩いていますよ(笑)。

ニリツ:朝にちゃんと動かないと、家で仕事をしている間に体温が上がらず、効率が目に見えて落ちるんですよね。最初に体温を上げておくと一日中動きやすくなるので、仕事のためにも運動は大切だと思います。

佐藤:わかります。僕も一時期、本当に運動をしなくて腰がやばいことになったんです。運動するとマシになるのを実感したので、ある程度はした方がいいと思いますよ。

ニリツ:やっぱり筋肉が必要か……(笑)。

 

 

――そして、第1巻刊行時にインタビューを行った『処刑少女の生きる道(バージンロード)』ですが、完結から約1年が経過しました。あらためて当時の心境についてそれぞれお聞かせください。

 

佐藤:まず「終わらせられた」っていう達成感がありました。もちろん寂しさはありつつも、僕は基本的に作品を終わらせるために書いているので、その目標を達成できたという満足感が強かったです。

ニリツ:僕は絵描きの立場からになりますが、終わってほしくなかったという気持ちはありました。イラストレーターは作家さんとは違う形で作品が終わる経験をたくさんしていて、常に続いてほしいと願いながら仕事をしているんです。『処刑少女』もそういった気持ちを抱きながら、それでも残りの作業をこなしていく中で少しずつ心を整理することができ、「真登さん、次の新作も頑張ってね」という話もできるようになりましたね。

佐藤:そういったニリツさんの気持ちも理解できつつ、僕の場合は望まない形で作品が終わる経験を過去にしているからこそ、シリーズとしてきちんと完結できたことが嬉しかったですね。

ニリツ:自分で物語を閉じれるって、幸福なことだよね。

佐藤:そうですね。

 

処刑少女の生きる道(バージンロード)11

※完結まで書き切ることができた『処刑少女の生きる道(バージンロード)』

 

 

――続いて、お二人の仕事に対するお互いの印象についてうかがっていきたいと思います。まずはニリツ先生から見て、佐藤先生が描く物語にはどのような印象を持たれていますか。

 

ニリツ:真登さんの書く物語は、「非常にクレバーに作られている」という印象が強いです。絶対に外さないというか、最後にしっかり盛り上げるエモーショナルな部分を、確実にエモく仕上げてくる。読者の感情を揺さぶるポイントを的確に突いてくるので、そこに強い信頼感がありますね。

佐藤:ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいですね!

ニリツ:そして、そのエモさを最大化するために、大事な場面に至るまでのストーリーを逆算して積み上げている。伏線とはまた違うかもしれませんが、構成が非常にロジカルなんです。自分の感情のままに一気に書き上げるタイプではなく、練りに練って面白さを構築していく。ある種の職人のような気質を感じています。もっとも、本心がどうなのか聞いたことはなかったんですけど(笑)。

佐藤:多分、担当編集さんは僕のことを「感情で書くやつ」だと思っている気がしますよ(笑)。実際にシーン自体は感情で書くんですけど、全体としては商業的なギミックやロジックを意識して、それらを繋いでいくという感覚は確かにありますね。

ニリツ:そこが本当に上手いなと思いながら、いつも拝読しています。

 

 

――ニリツ先生の感じた「しっかりと盛り上げる部分」として、佐藤先生の作品にはバシッと絵が決まる瞬間が毎回用意されている印象があります。『処刑少女』第6巻ラストの師匠のシーンなどもそうですよね。

 

処刑少女の生きる道(バージンロード)

※『処刑少女の生きる道(バージンロード)』第6巻より、導師「陽炎」のイラスト

 

佐藤:そこはニリツさんが最高の絵にしてくださるという信頼があるからこそ、強く書ける部分ですね。

ニリツ:そういった箇所は「ここは盛り上げが必要なんだな」と察しながら描いています(笑)。

佐藤:ありがとうございます。加えてサービスシーンもイラストを意識して書いている部分になります。なので逆に、小説投稿サイトに投稿する作品では、そもそも挿絵がないので、サービスシーンをあまり書かないんですよ。絵にならないのであれば、無理に書く必要もないかなと思ってしまう。商業作品の執筆時には「絵になった時の姿」をかなり意識しています。

ニリツ:これはライトノベルならではの考え方かもしれませんね。僕の場合、サービスシーンについては「描きたい」というよりは「必要だよね」という感覚が強いです。

佐藤:間違いないです。ただ、『くたばれ愛しの魔術師ども』の第1巻に関してはサービスシーンが少なく反省点もあったので、今作でも『処刑少女』と同じようにヒロインにはコスプレをさせていこうかなと思っています(笑)。

ニリツ:今作でもコスプレさせていくんですね。かしこまりました(笑)。

 

 

――では、佐藤先生から見たニリツ先生のイラストの印象はいかがでしょうか。

 

佐藤:大前提として、ニリツさんは僕が読者だった頃から活躍されている業界の大先輩という意識が非常に強いです。その上で、イラストの印象としてはとにかくクールでかっこいい。特に「目力の強さ」が凄まじく、表紙として一目で読者を惹き付けるイラストを描かれるので、担当していただけると本当に心強いです。『くたばれ愛しの魔術師ども』の表紙も3パターン出していただいたのですが、どれも素晴らしくて「イラスト単体ならこれ、ロゴを載せるならこっち」と、みんなで相当悩みました。

 

くたばれ愛しの魔術師ども

※『くたばれ愛しの魔術師ども』のカバーイラスト

 

ニリツ:表紙は決定までかなり時間がかかりましたね(笑)。巻が進めば「この作品はこういう見せ方が読者に伝わりやすい」というパターンが見えてきますが、どんな作品でも第1巻はキャラクターデザインからカラーの合わせまで、試行錯誤の連続なんですよ……。

佐藤:イラストと文章とで多少の違いはありますけど、気持ちはすごくわかります。世界観の設定など、第1巻は考えることが本当に多いですよね。ニリツさんは構図の力も本当に強いと思っているので、モノクロの挿絵も毎回楽しみにしています。

ニリツ:モノクロは構図が命ですから、そう言っていただけると嬉しいです。それこそ以前、ライトノベルを読んでいた時に、構図に凝った絵がすごくて衝撃を受けたことがあったんですよ。イラストレーターのうなじ先生という方で、特に『狗牙絶ちの劔 ―刀と鞘の物語―』の挿絵は、普通に人が並んでいるのではなくパースが効いていたり、漫画的なスピード感もあったりと、ものすごいインパクトがありました。挿絵って制限があるようだけれども、それを突破した絵はすごく印象に残るし、物語を盛り上げられるので、そういうイラストを目指していきたいなと思いながら描いてますね。

 

 

――モノクロのお話で思い出したのですが、ニリツ先生はコミックマーケットで『One COLORS!!!』というモノクロ系の同人誌を出されていましたよね。

 

ニリツ:ありましたね。イラストレーターは普段カラーの一枚絵で描くことが多くて、ラノベの挿絵は漫画家さんの作業を真似するところがあると思うんです。普段は使わない「カケアミ」や「スピード線」のような技術を習得しないと、ラノベのイラストレーターとしてのパワーが上がらないと感じ、漫画家の知り合いに相談しながら同人で練習し、商業に持ってきました(笑)。

 

 

――表現の幅を広げるために異なる分野の技法を学ぶ姿勢、とても素晴らしいですね。それではそんなお二人が新たに世に放つ『くたばれ愛しの魔術師ども』について聞いていきたいと思います。まずは本作がどんな物語か教えていただけますでしょうか。

 

佐藤:本作は現実世界の日本と異世界のファンタジー世界がつながって、作中の主な舞台となっている「学園諸島」という場所で、様々なキャラクターたちが交流を深めていく物語です。本筋は「最初にヒロインが敵キャラに追い詰められているところに主人公が現れて、ヒロインたちの窮地を救う」という王道なお話になっています。

 

くたばれ愛しの魔術師ども

※地球世界と天盤世界、二つの世界の学生が切磋琢磨する「学園諸島」が本作の舞台となる

 

ニリツ:僕は『くたばれ愛しの魔術師ども』の原稿を読んで、『処刑少女』と同じ面白さを作ろうという感覚より、ちょっと違う面白さに挑戦しようという感覚をなんとなく感じましたね。

佐藤:そうですね。『処刑少女』はラノベとして割と変化球な作品ではあったんですけど、『くたばれ愛しの魔術師ども』ではラノベとして直球なものを書こうと思いました。この先のことはわからないですが、とりあえず第1巻に関しては、終始エンタメとしての楽しさにフォーカスしようという気持ちで仕上げています。

 

 

――続いて、本作の着想についてもお願いします。

 

佐藤:着想に関しては、もともと「現実ベースのローファンタジー」と「異世界のハイファンタジー」を合体させたいという構想があったんです。そこを起点にして、「14歳の頃の自分がワクワクできるエンタメ」を目指して物語を広げていきました。やっぱりライトノベルを名乗る以上、読んでいてワクワクするのが一番だろうと思い、『スレイヤーズ』のような「冒険活劇」として書こうと思ったんです。

ニリツ:最近は逆に少なくなってきた「ザ・ライトノベルの王道」をやってやろうという熱量をすごく感じる作品でしたね。

佐藤:ありがとうございます。本作は特に『とある魔術の禁書目録』と『ブルーアーカイブ』の影響を受けていまして、『禁書目録』のような2000年代から2010年代にかけて盛り上がった学園バトルファンタジーの空気感はかなり意識しています。ただ、かつての流行にそのまま戻るのではなく、今現在の「小説家になろう」発の異世界ファンタジーのエッセンスをうまく取り込むことで、読者にも新鮮に見えるよう試行錯誤しました。また、『ブルアカ』の大人がいない学生だけの都市という舞台設定にも着目しています。大人がいないからこそ、少年少女が自立して生活し、時に無茶な責任を背負わされる。その自由さと危うさを学園諸島という舞台で表現しています。ただし、そのままなぞることはなく、自分なりのロジックをどう乗せるかに心血を注ぎました。

 

くたばれ愛しの魔術師ども

※固有武器を出して戦う、熱いバトルシーンは必見

 

 

――ありがとうございます。次にキャラクターについてお話を聞いていきたいと思います。本作は主人公である旭ノ九郎が家出をして学園諸島へ飛び込むところから始まるわけですが、まずは九郎というキャラクターについて教えてください。

 

佐藤:九郎は日本生まれでありながら、他の人にはない「変な力」を持っていて、そのことに悩み、家を飛び出した少年です。性格設定にはかなり迷いがあったキャラクターでもあって、全キャラクターの中で間違いなく九郎(くろう)が最も苦労(くろう)したキャラクターになります(笑)。

一同:――(笑)。

ニリツ:性格や行動原理を含めて、これまでの真登さんの物語にはいなかったタイプのキャラクターで、新鮮な感じでしたね。

佐藤:ありがとうございます。最初は素直にかっこいいキャラクターを書きたいと思っていたんですが、いざ書き始めてみるとすごく難しくて。往年のラノベ主人公のようなウジウジしたパターンも試しましたし、逆に突き抜けた俺様系で書いてみたこともありました。でも、どれもしっくりこなかった……(笑)。

 

 

――そこから現在の九郎にたどり着いた決定打は何だったのでしょうか。

 

佐藤:物語の序盤に、幼馴染の唐音が「青春コンプレックスがあるカッコつけ野郎」と言ってくれたことで、ようやくキャラクターの方向性が固まりました。加えてヒロインの一人であるピナが九郎に慰められた時に言ったセリフの影響も大きかったですね。最終的に二人のヒロインが九郎というキャラクターを定義してくれたなと思っています。

 

旭ノ九郎

※人並み外れた青春を送りたい主人公の旭ノ九郎

 

 

――ニリツ先生は九郎をデザインするにあたってどんなことを意識されましたか。

 

ニリツ:主人公ということもあり、基本的にはオーソドックスさを大事にしたいと考えていました。主人公だからといって過剰に目立たせようとはせず、それでいて読者の記憶に残るようなライン取りを意識しています。

佐藤:九郎自身、ガツガツしたタイプではないですからね。

ニリツ:そうですね。ただ、九郎は自分の欲望に忠実なキャラクターでもあるので、見た目には朗らかさがあってほしいし、ニヤリと笑った時の表情がいやらしくなりすぎないように、という塩梅は難しかったです。下手をすると格好つけの嫌な奴に見えてしまうので、少しひねくれてはいるけどすれてはいない王道の少年漫画の主人公のような爽やかさを意識しました。

佐藤:そうそう。まさに「すれていない」という表現がぴったりな、純粋さを失っていないキャラクターになっています。

 

 

――主人公としてオーソドックスさを大事にしたとのことですが、着ている制服は一般的な学生服ではなく、襟がセーラー服のように幅広いデザインになっている非常に特徴的なものですよね。

 

ニリツ:今回は魔法学校が舞台だったので、制服には『ハリー・ポッター』のような魔法使いのローブをイメージに取り入れたいと考えました。絵的にも派手になりますし、アクションシーンでも映えるかなと。ただ、普通のローブでは特徴が薄いので、ピナたちの制服デザインとの統一感を持たせるためにセーラー要素を加えました。セーラーの襟を魔法ローブのフードに近いパーツとして再解釈したことで、あの絶妙な長さに落ち着いたんです。

佐藤:現代的な要素を残しつつ、しっかり魔法学校らしさを表現していただき、本当に凄いなと思いました。実は「クラシックさとSF感」のバランスが非常に難しくて、デザインに関しては色々とリクエストをさせていただいたんです。本当に何度も試行錯誤を重ねさせてしまって申し訳ない思いでいっぱいでした(笑)。

ニリツ:九郎をクラシックな魔法使いに寄せすぎると、SF要素のあるピナと並んだ時に浮いてしまうので、調整が本当に大変でしたね。私としては可能な限りシンプルに、その分記憶に焼き付くようなデザインを目指しました。結果として、今の形がベストだったと思っています。

 

 

――ありがとうございます。続けて、九郎と関わりを持っていくヒロインたちについてお聞きしたいと思います。まずは第1巻のメインヒロインであるピナ・リキュアについてお願いします。

 

佐藤:ピナは「とにかく可愛く描こう」という想いを込めたキャラクターで、基本的には倫理観が強くて優しい子です。そこに、メスガキとまではいかないまでもからかい上手な要素を組み合わせて作ったキャラクターになっています。ニリツさんにキャラデザをお願いする時には、「オタクに優しいギャルみたいな感じになります」と伝えた覚えがありますね(笑)。

ニリツ:確かに言われました(笑)。実は、ピナのデザインに関しては「絵」と「キャラクター」が完璧に一致している段階ではないんです。絵というのは描き進めるうちにキャラクターに染まっていくもので、『処刑少女』のメノウが第1巻の時と最後とで雰囲気や表情の作り方が変わったように、描いていくうちにイメージが固定化していくんです。ピナは真登さんがおっしゃったように、ある意味でオーソドックスかつストレートな可愛さを持った子です。だからこそ、まだ方向性が定まりきっていない部分があるとも言えます。ここからどう定まっていくのか、僕自身も楽しみにしているところがありますね。

 

ピナ・リキュア

※常識人で苦労人なヒロインである「魔女工房」ピナ・リキュア

 

佐藤:デザインを考える段階では、作品を読んだニリツ先生から「この子、貧乳なんじゃないの?」と確認されることもあって、「おっぱいを大きくしてください!」と強く返答させていただきました。

ニリツ:その節は2、3度ほど戦いましたね(笑)。

佐藤:僕の意図をお伝えしても、最初は「このままでいいんじゃないか」という反応が返ってきて、「そこをなんとかお願いします!」という感じで通させてもらいましたね。最近の情勢だと、今のピナくらいのサイズでも「普通」か、下手したら「小さい」扱いをされてしまう風潮があるなと思っています。

ニリツ:本作のハルハナのように、今のエンタメ作品には胸のサイズのインフレも起きてますからね(笑)。

 

 

――デザインをめぐり意見のぶつかり合いもあったのですね(笑)。次に胸のサイズのインフレとして名前の挙がったトリトニス学園に所属するハルハナ・バッカスについてお願いします。

 

佐藤:ハルハナは、第1巻において作中最強なアホの子です。おバカで人懐っこい大型犬のようなイメージで、ライトノベルやゲームでたびたび見かける変な格好をした女の子そのものの服装をしています。僕からは「水着ジャージで巨乳」までを設定として決めていたんですが、ニリツさんがニーソックスを履かせ、さらに低身長という要素を足してくださり、どんどん盛られていった結果、すごいことになりました(笑)。当初の設定では、もうちょっと背が高かったんですけどね。

ニリツ:私が「背を低くした方がエッチでいいと思います」って提案しました(笑)。

佐藤:それはその通りだと思ったので、ピナのおっぱいを大きくしてもらう交換条件で、その提案を吞みました(笑)。

ニリツ:ハルハナについては原稿を読んだ時点で尖っている方向性が明確だったので、デザインに落とし込む作業は一番スムーズでした。デザインを考える時に尖っている部分を拾い上げるのは意外と難しくないんですよ。逆に尖った部分の少ないピナの方がキャラデザは大変だったかなと感じています。

 

ハルハナ・バッカス

※独特の服装がトレードマークの「理解不能」ハルハナ・バッカス

 

佐藤:ハルハナは設定段階から一番評判が良かったですし、わかりやすい魅力があるキャラなんでしょうね。ただ、靴下のこだわりには驚きましたよ!僕が原稿で「ニーソックス」と書くところを、間違えて「ハイソックス」と書いてしまったんですけど、ニリツさんが当然のようにニーソックスのイラストをあげてきて(笑)。

ニリツ:ジャージを羽織っていて、下を履いているか分からないという状態で太ももが見えているなら、「そこはニーソックスで挟まないとダメだろう!」と。

一同:――(笑)。

佐藤:水着にニーソックスまで合わせるのは、流石にマニアックすぎるんじゃないかという懸念はあったんですよ。まあ、ハイソックスにしたからといって、彼女のヤバさが抑えられるかと言えば、全然そんなことはないんですけどね。

ニリツ:そこは明確に攻めていかないとダメだと思いました(笑)。

 

 

――ニリツ先生の絶対領域への強いこだわりが伝わってきました(笑)。続けて、トリトニス学園の学生であり校長でもあるローリア・トリトニスについてお願いします。

 

佐藤:ローリアは三人のヒロインの中で一番年下でありながら、リーダー的な立場にいる少女です。他の二人は、彼女が年下であるからこそある程度保護しつつも、立場としては彼女に従っているという関係性になっています。ある種「ヒロイン側の主人公」のような立ち位置にいる子でもありますね。リアルに考えると相当苦労しそうな立場なのですが、彼女の性格を「うっかり王女様」に設定することで、物語が暗くならないよう、明るいエンタメとして楽しめるキャラクターに仕上げました。

 

ローリア・トリトニス

※トリトニス王国の第二王女「君主継承器」ローリア・トリトニス

 

ニリツ:九郎が彼女を見た時に「お姉さんに見えた」と言っていたように、ヒロインの中で身長が一番高い設定なんですよね。でも、顔つき自体は一番幼く描こうと思って、体格と顔の組み合わせのバランスはデザイン時にかなり意識したポイントです。

佐藤:ローリアのデザイン案をいただいた時、一番印象的だったのがツインテールでしたね。

ニリツ:勝手にアレンジしてしまったのですが、大丈夫でしたか?(笑)

佐藤:大丈夫です!もともとの指定ではブロンドのロングウェーブくらいだったのですが、ツインテールというキャラクター性を出していただいて、むしろ「すごいな」って感じました。腰まで届くようなボリュームのあるツインテールなので、見ようによってはロングヘアにも見える、絶妙なバランスだったと思います。

ニリツ:それならよかったです。彼女は他のヒロインより年齢が幼いという設定を活かしたいと思ったんですよ。本人は幼い自覚があるからこそツインテールにしているけれど、周りから見ると大人びて見えてしまう。そんなギャップを狙いました。首から上は髪型を含めてロリ感を出しつつ、引きで見ると大人っぽいという狙い通りのバランスになったと思います。

佐藤:そうですね。見た目と中身のアンバランスさ、そのギャップが彼女の大きな魅力になっていると思います。

 

 

――最後に、九郎の幼なじみである渡良瀬唐音についてもお願いします。

 

佐藤:唐音は、往年のライトノベルで絶対的な人気を誇ったクールキャラの系譜をベースにしています。ただ、単なる毒舌キャラになりすぎないよう、九郎との確かな関係性が序盤から伝わるように意識して描写しました。主人公にとってかけがえのない大切な存在であることが読者に伝わればいいなと思っています。

ニリツ:唐音も真登さんからの指定が明確だったので、ストーリーからスムーズにイメージを膨らませることができたキャラクターでしたね。

佐藤:唐音のラフを初めて見たときは、『処刑少女』にはいなかったタイプの美人さんでびっくりしました。強いて言えばミシェルに近いのかもしれませんが、よりラノベのメイン層に刺さるキャラクターなのかなと。ニリツさんの描く目が細めの美人さんはどこか新鮮な感じでしたね。

ニリツ:ありがとうございます。唐音のデザインは良家のお嬢様らしい黒髪ロングの中に、帯のような「和の要素」や指定にあった「でっかいコートを羽織ってアクションをしそうなワイルドさ」を加えていきました。個人的に印象に残っているのは彼女が持っているギターケースですね。僕は最初、手で持つ重厚なタイプのハードケースをイメージしていたのですが、真登さんのリクエストで背負えるソフトケースになりました。

佐藤:そこはビジュアルとしても、ギターケースを背負った方が絶対に格好いいと思ったんで!

ニリツ:そうですね(笑)。物語の序盤に登場するヒロインですし、口絵の1枚目を飾るキャラクターなので、一目で「こいつ強いな」と感じさせるオーラは必要になるのかなと感じました。それが結果的にあの立ち姿や、今のデザインに繋がっていますね。

 

くたばれ愛しの魔術師ども

※一目で強さを感じさせるワイルドでクールな幼なじみ・渡良瀬唐音

 

 

――ありがとうございます。お二人のお気に入りのキャラクターについてもぜひお聞きしたいです。まずは佐藤先生からいかがでしょうか。

 

佐藤:私は作者なので、全員を愛しているという前提にはなるのですが、生むのに手こずっただけに印象深くなったのは九郎ですね。逆に、書いていて助かったのはサブキャラクターのカルディ兄妹です。二人が登場するだけで、場面が華やかになるんですよ。

ニリツ:わかります(笑)。

佐藤:プロットの段階では、深く設定を固めていたキャラクターではなくて、最初に物語に絡んでくる不良がいるくらいの勢いで出したキャラクターだったんです。でも、いざ書いてみたら、思いのほか上手く動いてくれて(笑)。あいつらが生まれたことで、作品の面白さが二割増しくらいにはなったなと自負しています。

 

 

――ニリツ先生はいかがですか。

 

ニリツ:基本的に強い女の子が好きなので、ハルハナがお気に入りですね。イラストレーターの目線からだと、次巻以降でカルディ兄妹を描くのが楽しみです。絵にするのが絶対に楽しいキャラだろうなという予感があるので。ビジュアル的にもコメディタッチな表現が映えると思います。

佐藤:僕も今から楽しみにしています!カルディ兄妹に関しては、こちらから細かく指定することもないんじゃないかなと思っています。特に妹は、ギャル系にしてもダウナー系にしても可愛いでしょうし、思いきり破天荒な感じにしてもいい。方向性の選択肢が多い分、デザインは難しそうですが(笑)。

ニリツ:読んだ印象はどこか子供っぽいイメージで、アニメ『ガン×ソード』に登場する双子のキャラクターが頭に浮かびましたね。カルディ兄妹のイラストは「コメディタッチで、ちっちゃい二人がわちゃわちゃしている」というニュアンスを大事にしながら、あらためてもう一度練り直してみます。

佐藤:よろしくお願いします!

 

 

――作中で都市を管理している機械生命体「ゴボット」についてもお聞きしたいです。彼らは都市のインフラを担う存在ですが、性格面がかなり特殊ですよね。あのキャラクター造形のイメージや、アイデアの元はどこにあったのでしょうか。

 

佐藤:設定上、ロボットというのは物語を進める上でもっとも都合のいい舞台装置になりがちなんです。でも、単に無機質な機械がいるだけでは面白みに欠けるなと思い、ある程度のキャラクター性を持たせようと「人類を見下している、偉そうでクソみたいなロボット」という方向で色付けしてみました。

ニリツ:ゴボット、本当に口悪いですよね。なんであそこまで口を悪くしたんですか?

佐藤:自分でもわからないんですよ。(笑)。もしかしたら、僕の中にあるAIのイメージが影響しているのかもしれません。もしAIが本当に自我を持ったとしたら、わざわざ人間様を尊敬したりはしないだろう、という考え方があるんです。

ニリツ:なるほど。真登さんって『処刑少女』でもそうですけど、キャラクターの「口悪い芸」に定評があるじゃないですか。真登さんが「口悪い芸」をやっている時って、ちょっとだけ素の顔が垣間見える気がして、そこがまた好きなんですよ。

佐藤:まあ、多少は自覚がありますけど……(笑)。書いている自分も「なんでこんなにスラスラと人類への悪口が出てくるのか」と驚くことがあります。

ニリツ:人類への不満が溜まってるんじゃないですか(笑)。

一同:――(笑)。

 

 

――ありがとうございます。本作では、ラブコメの要素にも力を入れているとお聞きしました。佐藤先生が執筆にあたって意識したこと、そしてニリツ先生が実際に原稿を読んで感じたことなどをお聞かせください。

 

佐藤:本作は「1巻では一人のヒロインを、確実に主人公に惚れさせる」という目標を定め、書き進めました。個人的に、エンタメにおけるヒロインは恋に落ちる瞬間が一番可愛いと思っているんです。だからこそ、その一番おいしい部分を1巻のクライマックスに持っていこうと考えました。執筆の際は、「1巻で絶対においしいところを書いてやるぞ!」という気概で臨みましたね。

ニリツ:前作の『処刑少女』に関して、愛はあっても恋はなかったと感じているので、新シリーズでラブコメ要素がどう転がっていくのか、描き手としても楽しみにしながら作業していました。

佐藤:『処刑少女』で描かれなかった分、本作ではニリツさんの描くラブコメ絵が見られるんじゃないかと、僕自身も楽しみにしているんです。

ニリツ:頑張ります(笑)。ちなみに僕、ライトノベルのお仕事で「ザ・ラブコメ」といったイラストって、ほとんど担当したことがないんですよ。別にやりたくないわけではなくて、むしろやりたいとすら思っていたんですけど、依頼がまったくこなかった(笑)。ライトノベルのお仕事をしていると、キャラクターが恋に落ちるシーンは出てくるので、挿絵のメリハリという意味では毎回楽しみにしています。本作でもそのあたりのシーンを描けるのが楽しみですね。

佐藤:僕もすごく楽しみにしています(笑)。

 

 

――では、本作の見どころや注目してもらいたい点、どんな読者がこの作品を読んだら面白いと感じてもらえるのか教えていただけますか。

 

佐藤:冒険活劇が好きなラノベ読者の方には、間違いなく刺さる作品になっていると思います。それこそ2000年代の熱い学園異能バトルが好きな方にも、2010年以降のなろう系ファンタジーにあるような賑やかで可愛い冒険活劇が好きな方にも、どちらにも自信を持っておすすめできる一冊です。エンタメ色が強く、ドタバタ感のあるラブコメ要素も盛り込んでいるので、「これぞライトノベル!」という王道のエンタメを求めている方には、ぜひ手に取っていただきたいと思います。ヒロインがめちゃくちゃ可愛く描けたので、そこもぜひ注目してほしいです!

 

くたばれ愛しの魔術師ども

※可愛いヒロインとのラブコメにも注目してほしい

 

――ヒロインの魅力は重要ですよね。ニリツ先生はこの作品をどのような方に読んでほしいですか。

 

ニリツ:真登さんが本作で狙っている部分って、前作の『処刑少女』とはまた違うベクトルの面白さなんですよね。なので、その変化を楽しめる人はもちろん、逆に『処刑少女』ファンの方にも「こっちの方向性も面白い!」と感じてもらえたら嬉しいです。第1巻のテンポ感については、『処刑少女』を読んでいる方なら佐藤真登先生らしいと感じてもらえるはずなので!

佐藤:確かに、そこは共通しているかもしれません(笑)。

ニリツ:でも、あの展開で「コイツまたやったな!」って、読むのをやめてしまう人が現れないか、ちょっと心配です(笑)。

一同:――(笑)。

 

 

――それでは最後にファンの皆さんに向けてメッセージをお願いします。

 

佐藤: 全国書店・オンラインショップで好評発売中です!ぜひ読んで楽しんでください!

ニリツ:作家とイラストレーターと編集の戦いの成果をいっぱい詰め込んでいますので、楽しみに見てもらえると嬉しいなと思います。

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

ふたつの世界の学生たちが織りなす王道魔法学園ファンタジーを綴った佐藤真登先生と、個性的なキャラクターたちを魅力的に描き切ったニリツ先生にお話しをうかがいました。魔法がぶつかる熱いバトルから、恋に落ちるヒロインが魅力的なラブコメまで楽しめる『くたばれ愛しの魔術師ども』は必読です。

 

<取材・文:ラノベニュースオンライン編集部・三上/鈴木>

 

©佐藤真登/ SB Creative Corp. イラスト:ニリツ

kiji

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『くたばれ愛しの魔術師ども』特設サイト

GA文庫公式サイト

 

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くたばれ愛しの魔術師ども (GA文庫)

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